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2013年1月19日

心新たに 初釜

下村宗悦(長野不白会)

正月飾り
 新しい年を迎えた一月十九日、先生のご自宅の茶室にて初釜が行われました。
 その日は寒くピーンと張りつめた空気の中の席入りでした。青竹に柳、南天の枝が飾られた床には、弦が描かれた孤峰不白の掛物、しめ飾りのお棚には朱桶の水指、皆具、私は緊張感で一杯になりました。
 お炭に始まりいよいよ点心です。先生の愛情が詰まったお雑煮をいただき、心が和みました。そして八寸から千鳥へと進み、皆さんのお顔もほんのり色づき、昔の人は優雅に茶の湯を楽しんでいたのだと思いました。
 中立を経て次はお濃茶です。先生のお点前の所作に見惚れ、その茶筌通しの美しさに一瞬ドキッとし目の前が明るくなった感覚に襲われました。嶋台の茶碗の金色に真新しい白い茶筌の美しさ、なんときれいな景色なのでしょう。  日頃はお茶を点てることに励んでおりますが、昔から続いている茶道とはもっと美しいものだと改めて認識致しました。
 今年も心新たに茶の湯のを楽しみお稽古に励もうと感じた初釜でした。
 

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2013年1月8日

初釜報告 羅府新報から 

新井社中(ロサンゼルス不白会)

回り花
季節の花で廻り花
 江戸千家ロサンゼルス不白会、新井宗京社中は8日、ロングビーチ自宅の鶴林庵で初釜を催し新春を祝い、七事式の廻り花を行った。
  床には江戸千家十代家元名心庵筆、『「廻り花」竹の清を切り 水の清を盛り 花の清を入れて 心の清を楽しまん』を掛けた。花入-竹花入、棚-竹台子、皆具-青磁 千舌関、濃茶器-瓢茶入 喜山造、薄器-平菊赤 金輪寺、茶杓-名心庵作 松の友、茶-星の奥 八女星野園、菓子-打菓子 諸江屋
 例年のごとく、札を引き各担当を決め、正客はマーセリオ宗和、次客は藤田宗明、三客は新井宗京、東は榊原美香で七事式の廻り花を学んだ。そして、炭点(マーセリオ宗和)の後、懐石には新井宗京師の手造りのお節とお雑煮を頂き、中立。後座は濃茶点前(榊原美香)、薄茶点前(藤田宗明)の後、皆で廻し点てにて初釜を祝った。
 幸い、当日は素晴らしい天候に恵まれ幸先が良い一日であった。
お炭点"
炉の炭点前で気持ちも温まる
濃茶点前
新春らしい竹台子で濃茶点前
 

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2012年9月15日

老人施設の抹茶クラブ

田中宗治(七戸不白会)

老人施設抹茶クラブ"
 抹茶クラブは月に一度開催され、その日を楽しみに係の人に手を引かれたり、車椅子やベッドで集まってきます。
 書と庭の花を飾ると即席のお席ができて、月の誕生者にお正客になっていただきます。最初にお茶をいただけるのが嬉しい様子で、神妙に両手で茶碗を持っています。和菓子のもみじに「きれいだね、食べるの勿体ない」などと言いながら「あら、お先に、を言うの忘れちゃったー」と大笑いになりました。
 点滴を受けながらもお茶が大好きで、看護師の許可を得てお菓子とお茶をあげると笑顔で「ありがとう」を繰り返していました。
 また、ある男性はお茶をいただくと興に乗って「お礼に歌を」と言って歌い出し、こんなお礼の仕方もあるのかと教えられました。時には実習生や面会の家族もお席に誘って会話も弾みます。
 施設での日常にひとときでも楽しい時間を過ごしていただけたらと願っています。

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2012年9月2日

天心忌茶会に参加して

幸田宗陽(福島不白会)

 いつもの様に清々しい打ち水があり、その露地を進み、玄関に入るといつもと違う気が今日はみなぎっていると感じました。
 寄付より花月の間へのご案内が。庭のつくばいには瑞々しい薄紅色と純白の蓮の花が二本、凛と活けてありました。今から始まる天心忌式に気が引き締まる思いにさせられました。
 床の間の中央には、平櫛田中作天心像「鶴氅」(かくしょう)が。肝を潰しました。お軸は大観筆「不二山」の図。少し落ち着きを取り戻しました。静かに宗匠が天心像に進み、蝋燭に明かりを灯し、香を焚き、お経をあげ始めると一同胸の前に手を合わせ頭を下げました。 
 続いて宗匠の供茶点前が始まり、外の鈴虫の少し衰えた声を聞きながらやはり季節は移っていると思っていると雨が降り出して来、雨と鈴虫の合奏がやがてドンドンと家をたたく音のみになり、まるで天から今到着したと伝えているように聞こえました。
 宗匠が一人のためのお茶に集中しておりました。今年の研究課題のひとつ台天目の意味をもう一度確認させられているようで、その所作とお姿に前のめりになる程引き込まれておりました。供茶は平櫛先生によって天心像の前に厳粛に捧げられ、我々もやっと普通の呼吸に戻ることができました。そして雷。中立ちへと。
 庭の蓮の花は何故か紅白の花びらが一枚ずつ散り、水の上で寄り添って浮かんでおりました。散華なの? 葉の上には大きすぎる玉の水を一滴もこぼしてはならぬと茎がバランスを保って立っておりました。あの水は甘い水に違いない、飲んでみたいと思いながら見つめておりました。天心とそのお弟子さんたちの感涙の雨。誠を尽くすと天が感じて降らすという甘い露。以前にもこういう情景を味わったことを思い出し、これは自然の摂理なのではと二度の不思議な体験に思ってしまいました。
 呈茶席へ、百碗展の残り物に「福」の茶碗にて運ばれて来たお茶を、うきうきしながらいただきました。それらのお茶碗はお隣りをも飛び越えて楽しませてくれ弾んだ席に包まれました。
 大観、田中、宗匠の天心への信と畏敬の念で、突き進む意気込みを見て聞いて男が男に人間的なあこがれや人柄にホレるという熱い恋慕の思いがエネルギーとなって伝わって来、堂々男子は死んでもよい、のリズムが心地よく思い出された午後の講演でした。
 長い長い変化に満ちた一日、あの場所に居合わせた事に感謝した日でした。

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2012年7月31日

震災を体験して

門脇 和希(仙台同好会)

 去る七月三十一日、家元と博子先生が仙台にいらっしゃいました。私が家元とお会いするのは二回目で、初めてお会いしたのは東日本大震災以前のことでした。
 今回家元がおっしゃっていたことで一番印象に残っているのは、いろいろな所に知り合いがいてそこに会いに行くのが楽しいということです。  仙台同好会は人数がとても少ないです。茶道を続けている理由は皆それぞれで、日本の伝統文化を学びたいという方もいれば、頭の体操になるからという方もいます。
 地震後に何カ月のお稽古ができない日が続きましたが、幸いなことに現在は地震前と変わらぬメンバーでお稽古ができています。大震災後の皆様方のご支援に感謝するとともに、これからも家元がいつでもお越しになれるよう、仙台の小さな火を絶やさないようにできればと思います。

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2012年6月24日

ホタル愛でつ夜咄の茶事

影山直美(福島不白会)

夜咄の茶事
福島民報社に掲載された写真から
 さる六月二十四日、涼やかな風が肌に心地よい夕べに、岩谷宗洋先生のお宅でホタルを観賞しながら茶事をおこなうことになりました。
 ホタルはこの時期になると、郊外の水路や田んぼで、飛んでいるのを見ることができますが、町中で、ホタルが飛び交う河川を復活しようと取り組んでいる「南川ほたる愛光会」の協力を得て、その会長さんにもご出席していただきました。
 部屋には手燭の灯りがともされ、「清流無間断」のお軸のもとに、大きな水槽にたくさんの美しい光を発するホタルが放たれています。
 ご亭主は岩谷宗洋先生、正客には金田恵雪さん、次客にほたる愛光会の会長さん、詰は根本宗久さんが務められ、岩谷宗清先生のご指導のもとにお茶事はスムーズに進み、季節の食材を用いた心のこもったお料理に亭主のもてなしの心を感じました。
 正客の金田さんからはその都度作法や料理について説明をしていただき、お茶事の流れを学ぶとともに、普段のお稽古の一つ一つの所作の意味が理解できたように思えます。
 「ホタル愛光会」の会長さんには、ホタルの飛ぶ様を身近に見ながら、様々なお話を伺うことができ、地元の環境改善活動の取り組みについて、お茶を通じて理解が深まったことに、とても心が満たされたひとときでした。
   濃茶が出される頃には手燭の薄明りのなかに、ホタルも点々と光を放ち思い出に残るお茶事になりました。
 ホタルの放つほのかで優しい光に一同幻想的な気分にひたりながら散会致しました。

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2012年6月10日

高田不白会青年部「青峰会茶話会」

高田不白会青峰会

山荘の床
  ●吉田悠雪
 小雨に潤った直江津五智の緑は一層鮮やかでした。山の傾斜に沿って進む足元の可憐なササユリの姿に立ち止まりながら山荘へ向かいました。六月十日は、高田不白会青年部「青峰会」で計画された茶話会の日。陶芸家木村邸で木村先生を囲み交流会が開催されました。山荘の床にはお家元の「駒鳥」の色紙、そして白きハマナスの花が生けられてました
。  竹田会長のお道具でテーブル茶、六人それぞれに世の喧騒を忘れお茶に親しみ、茶の心を学ぶことの喜びを感じていました。眼下に空と海が溶け合って雨色が美しく心捕らわれます。この日、粘土と轆轤の体験、手打ちそばの昼食、茶室でのお茶一服などが企画されました。この「青峰会」を皆さまと共にさらに活発化し、学び合い、お茶の味わいを楽しめるように、進めてゆきたいと思います。
 ひたすらに茶のこころ裡に持ち行かば 雨空の下賛美に潤う
テーブル茶
 ◇  ◇  ◇  ◇
●小笠原孝雪
 山小屋でテーブル茶を楽しんだ後、麺切りと天ぷらをご馳走になりました。手をかけられた材料のお話を聞きながら、自然の恵みと料理された方の手間を味わいました。
 丘の斜面にある敷地を散策し、園芸の話でひとしきり盛り上がってから、お弟子さんの指導で轆轤台の体験をしました。何とか形になった時は大変嬉しく、皆で作品を並べて喜び合いました。
 「それでは小間の席へどうぞ」とのお声がけに、普段着の私達は戸惑いながらも、躙り口へと向かいました。床の間に掛けられた大きな夕顔の花入に、ゆったり入った笹ユリと山荷葉が印象的なお席でした。
轆轤体験
 静かなほの暗いお茶室で薄茶をいただいていると、今日のおもてなしが次々と頭に浮かんできます。出会い、語り合い、笑い合ったことが皆、この一服へと繋がっていたと感じられ、感謝感激に包まれました。
 「お点前を替わって下さい」と勧められて、我に返って立ち上がりました。せめてものお礼に心をこめた一服を差し上げたいと思いながら。

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2012年5月27日

「世界のお茶の祭典」で茶の湯を紹介

西村宗櫛(ロサンゼルス不白会)

日本の茶の湯を紹介
ナレーションで解説しながらのお点前
 今年も、五月四日~二十七日まで、「Tea Lovers Festival」 〈世界のお茶の祭典〉が、ロサンゼルスのカルバーシテイで行われました。
 世界各地のお茶の紹介と、お茶を使用した料理などの紹介が、毎回行われました。
 五月二十七日最終日、日本のお茶の紹介として、江戸千家ロサンゼルス不白会、西村社中によりお茶会が行われました。午後三時三十分。四時三十分、五時三十分の三回。八女の星野園のお抹茶を、虎屋の干菓子と共に、大勢の外国人達がお堪能されておりました。英語のナレーションもつきましたので、皆さんお点前に興味を示し見つめておりました。飲み方の指導もあり、初めてのお抹茶を美味しそうに飲んでいました。
抹茶一服
初めてのお抹茶
 「風薫」の短冊を掛け、お花は竹の子と菖蒲が飾られました。道具の拝見では、活発に質問もありました。その後是非、茶の湯のお稽古をしたいと、若い男性がお稽古に早速来ております。日本の精神文化が伝わっているのでしょうか。アニメまんが「へうげもん」を見ている若者が意外に多いことにも驚かされます。
  日本の伝統文化である茶の湯の精神が、世界に正しく伝わることを願っています。
Tea Lovers Festival

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2012年5月20日

第五十一回 高田不白会茶会

高田不白会

広間床
広間席 床
 ●豊かな一日……牧井市雪
 新緑の五月二十日、第五十一回高田不白会茶会が東本願寺高田別院で開かれました。
 二席が設けられ、座敷席は岡田彩雪先生担当でした。家元好の四方棚と古唐津の小ぶりの水指で色合い落ち着いた取り合わせはすばらしいものでした。
 私は、広間席の保坂宗洋先生のお手伝いをさせていただきました。床は流祖不白の竹・画賛がかけられ、すっきりとしたさわやかな感じを受けました。またこの日のためにと、五智窯の花の蓋置がつかわれて、お客様との会話もはずんでおりました。午前は水屋担当になり、午後に半東を務めましたとき、はじめにお点前の方と一緒にあいさつとのこと、出過ぎず控えて補佐する大切さを、あらためて実感いたしました。
 正客様、皆さまから「お薄のお湯かげんもよろしくて、おいしいですね」と言っていただき、うれしく思いました。天候にも恵まれて、心豊かな一日でした。
  ◇   ◇   ◇   ◇
座敷席床
座敷席床 大徳寺大綱栄彦 和歌「茶」
●新たな一歩……岡田彩雪
 今年の支部恒例の春の茶会では、座敷席を担当致しました。身近にある花を用いお好みの四方棚を中心にお道具組を考え、雪の片づけの疲れが残る参加された会員の皆さまにおいしいお茶を楽しんでいただけるよう心掛けましたが、席主としての反省点が多々あり心残りがありました。
 一年前の五月、支部創立五十周年の記念茶会を無事終え今年は五十一回の茶会でした。一年も欠けることなく続けてこられた先輩の先生方のご尽力とご苦労を心にきざみ、後に続く私達も毎年楽しい茶会を継続していくよう、努めてまいりたいと念じております。

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2012年5月3日

遍照院茶会にお招ばれして

黒岩宗彌(久留米不白会)

濃茶席
 五月三日、森田宗尚社中の茶会が催されました。まず四畳半の間で薄茶をいただき、続いて台目席で濃茶、点心をご馳走になりました。新緑が眩しい初夏の一日、心地良い時が流れます。
 省みれば昭和六十年、故森田宗香先生をお迎えして、第一回の茶会を行った茶室です。当時若かった社中の仲間で「若葉会」というグループを作り、濃茶席、薄茶席、野点席の三席を順番に担当し、客になったり亭主をしたりの勉強会としてスタートしました。
 春の恒例の催しとして、二十年近く先輩方も楽しみにして参加して下さっていたと思います。数年のブランクがありましたが、三年前から再開され、今回は客として出席することができました。
 温かく指導、見守り続けて下さった今年十三回忌となる亡き師を偲びつつ、現在、自宅で点心を準備し、お茶を愉しめることに感謝の日々です。
…………
遍照院(へんじょういん)
 久留米市内、お寺が連なる寺町十七ケ寺の一寺院である。勤皇の志士高山彦九郎の墓がある。鞍馬の赤石や北山杉を配した京都風庭園の中に京都から移築した茶室「以白庵」がある。
薄茶席点前
薄茶席客

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2012年1月28日

ロサンゼルス不白会 初釜

ロサンゼルス不白会西村社中

初釜場面
濃茶で、一二三
 一月二十八日、江戸千家ロサンゼルス不白会西村宗櫛社中で、初釜が行われ、その様子が現地日本語新聞「羅府新報」で紹介されました。記事中より一部を要約し写真とともに紹介します。
  ◇  ◇  ◇
「初釜で茶道への理解深める  新春の一服を堪能」
 正月にちなみ、茶室には結び柳と紅白梅、床には羽鳥西恒筆「松柏千年翠」、鶴の花入には、松竹椿の他、庭に咲き誇っていた桃の花も添えられた。初座の炭点前では、亭主は「皆様の運勢が、天に昇る龍のように上昇し、今年も良い年になりますように」と、挨拶。手づくりの料理に続き、濃茶席では西村支部長を正客に、点前の採点をし互いの上達を見る「一二三」を行い、薄茶の席では客の振る舞いの心を学ぶ「数茶」を行い、それぞれ新春のお茶を堪能した。
 西村師は、「いたるところに今年の干支が生きており、新年のめでたい気持ちとともに大変おいしくいただきました」と感想を述べた。七事式の中の二つを経験した参加者からは、「ゲームをしているようで楽しかった」との感想が聞かれた。
  ◇  ◇  ◇
 なお,記事全文は,次の羅府新報のWebページでご覧いただけます。
 ○羅府新報記事:「江戸千家ロサンゼルス不白会:新春の一服を堪能」

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2012年1月7日

初稽古 

高野宗廣(茨城不白会)

初釜・初稽古
 新年、一月七日、自宅で初釜を催しました。時間と労力を惜しまず、心からの「もてなし」を心がけ、大勢で参加する和やかな茶会をテーマにしました。昨年の暮れに、試行錯誤しながらの会記作り。徐々に気持ちを高めていきました。掛物は「無事是吉祥」竹台子、皆具は唐銅。茶碗は萩。十一名の客を迎えました。
 席入り後の献茶に始まり、炭点前をし、しばし湯音に耳を傾け、この静寂な心地よい時間を過ごせる事に、心から感謝いたしました。茨城支部では、昨年は皆で楽しみながら稽古ができる「花月」を数多くしましたので、それを実践してみようと思いました。
 初めは、花付き花月。次は香付き花月。香銘は、「梅の香」。休憩を入れ、続いて懐石料理が運ばれ、和やかに寛いだ雰囲気になっていきました。私が凝った一皿は幸運が重なりますようにと、食材に「ん」が二つ付く物。銀杏、半片、隠元、人参、蓮根、金柑。等々十二種を盛り込み、南天と金粉で飾った料理。笑い声が上がり、指を折ったり、声に出したりと、話がはずみました。お酒は甘酒。熱いうちにと気になる一つでしたが、満足していただけた様でした。
 中立ち後、最後は、いよいよ濃茶付花月。菓子は、富貴豆を栗きんとんで包み、花芯は梅肉で色付けしてみました。銘は「白梅」。集中した数回の練習の成果も出て、やっと安堵の面持ちになっていきました。茶銘は「妙寿」、詰は伊藤園、茶杓は「希望」。
 なるべく自分らしい手づくりでと心がけた初釜を兼ねた初稽古は、十時から二時までの四時間。終わってみれば、あっという間の感じがします。
 この年が、平和で健やかでありますよう、切に願い手を合わせました。多くのお仲間の方々と、お茶の稽古を楽しめる幸せを噛みしめた年のはじめでした。

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2011年12月3日

ご相伝に臨んで

大井朝雪(長野不白会)

相伝式記念写真
あこがれの看板を手にして
 
  十二月三日、支部長宅のお茶室にての相伝式で師範のお免状をいただきました。
 最初にいただいた茶通箱の許状から乱飾の許状は書物でした。師範になりますと、お看板もいただき、そこにはやさしい書体で、師範と道号が書かれておりました。適度な重さのお看板を手にして私がお茶の師範を? いいの? と一瞬思いました。自分の未熟さを感じて修行中なのにいいのかな……と思ったのです。
 若いときから「お茶」、この言葉の響きに何か心が癒される感じをもっていました。いつか茶道を学びたいと願い、五十代半ばで始めました。意欲はあっても身体がお茶バージョンになかなかなれません。また、茶道の世界は幅が広く、その一つずつの奥がとても深いと驚きました。「喫茶去」、その意味を知ったとき、なんとお茶の世界は話のわかる気持ちの大きな世界なのでしょうと思ったものです。ところがお茶の世界を少々知った今、この言葉はお茶を点てる人、お茶をいただく人がともにお茶を深く理解している、その時に使われることがもっともふさわしいということがよくわかりました。
 しかし、あまり考えず前向きに、師範のお免状はやっと茶道入門を許されたものとの言葉を思い出し、これからお看板に恥じぬように精進しようと思います。
 先生、先輩、仲間の皆様、そして協力してくれている家族に感謝し、また人生の最終章で魅力ある趣味に出会えたことにも感謝して精進しながら「お茶」を楽しみたいと思っています。

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2011年11月6日

心尽くしのご相伝式

福田宗勝(大分不白会)

 十一月六日、大分支部では、お家元をお迎えして乱飾のご相伝式が行われました。生憎の雨でお家元には御苦労をおかけしてしまいましたが、感動いっぱいのご相伝式でした。
 しっとり濡れた露地の草木に落ち着きをもらって始まった朝。寄付では期待と緊張が少しずつ膨らみます。そしてお席入り。ぴいんと張った空気、胸が高鳴ります。お家元のお炭点前。息を潜めてしっかり拝見に浸る皆。私もお家元のお点前やお話に神経を集中させました。感動と緊張、至福の時。お茶事が続いていきました。お茶事の後、お家元より、親しく和やかに許状をいただいた十二名、だれもが感激、感激の表情でした。
 ご相伝式で受け取らせていただく事がいろいろあった中、私の心に強く響いたのは、私共の為にお家元がお持ち下さったお軸、「紅爐一點雪」です。
「『こうろいってんのゆき』と読みますが、皆さんは、どのように解釈しますか」
 情景は想い浮かぶものの、解釈については(うーん)と考え込んだ私でした。
 ややあってお家元が話して下さいました。「いろんな解釈ができると思うが、紅く燃える炉中に一片の雪が舞えば、雪という存在は忽ち消える厳しい現象。この厳しい現象を回避するか否かの選択をするならば、敢えてその厳しさに立ち向かう方を取りたい。発想の転換をすることにより、失敗を恐れず勇気を持って挑戦し、新たなものを見つけられる事に期待したい」
といった旨の内容だったかと思います。
 逃げ腰弱腰の自分を見透かされたような衝撃と、お家元の物事に対する熱い姿勢を感じました。
「気の短い人には落ち着きを、気のない人には気付かせるために、茶の湯は結構役立つもの」(便覧四十五号)とお家元が書かれていましたが、「気付かぬ」私は、茶の湯のお陰で教えられ、気付かされの機をいただいたと実感すること多々ありました。そして此の度の大きな気づかされ、「紅爐一點雪」です。お家元よりのこの励まし、贐の言葉は、ご相伝式でいただいた大切な物の一つです。今後は、茶の湯を含め生活の中で、私の歩む道の新たな灯にしていきたいと思います。
 

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2011年9月26日

エコと日本文化と茶の湯  

椎名宗梨(羅府不白会)

野点1
 二〇一一年九月二十六日、日本の内閣府認定NPOフォーエヴァーグリーンより依頼を受け、地球温暖化防止活動の一貫としてロサンゼルス近郊のディスカンソガーデン内の日本庭園にてお茶会を行いました。
 「温故知新」をコンセプトとし、日本文化をエコのアイディアの源泉として紹介するという、先進的な開催主旨が認められ、このお茶会は現地英語新聞二社が一面のトップで報じました。
 フォーエヴァーグリーンさんの日米の子ども達による地球温暖化に関する国際交流事業は大変高く評価され、今回のお茶会は、子ども達と環境という視点で考えながら開く事ができ映像作品では茶道監督として紹介され、私自身もとても勉強になりました。
野点2
 まず、子供たちに茶の湯を実践してもらうために、学校へ出張し、生徒達に基礎体験講座を行いました。生徒達は亭主、半東、正客、陰点てに分かれて各パート毎のお稽古に取り組みます。アメリカ人生徒達の日本文化への敬意ある学びの姿勢は大変素晴らしく、環境との接点を模索するという「勉強の時間」ですが初めての浴衣に歓声を上げながら楽しく取り組む姿がありました。茶の湯を通し、思いやりの心を、物を大切に扱う事、次の人を考える礼節等も学びます。
 お茶会の様子は、「大量生産・大量消費・大量廃棄」という二十世紀型のビジネスから、新しい目線で持続可能な社会を築く為に、生徒同士が環境問題を議論するビデオレターとして日本に送られるとの事。
 これまでに無い評価と新しい視点、世界で認められる日本の姿をお伝えしたく、筆をしたためさせて頂きました。

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2011年8月24日

バングラデシュでの茶会--バングラデシュ大使邸にて

高橋宗千(東京不白会)

テーブル茶
バングラデシュ大使邸で
 『大唐西域記』の三蔵法師である玄奘三蔵も訪れた古代仏教の都、バングラデシュにてお茶会を催しました。
 滞在したのがちょうどラマダンの期間でしたから、この国の人たちは日の出から飲食を断ち、日没後のラマダン明けに夕食が始まります。必ず食するものとして、サモサ、ブリ、ペアジなど、揚げ物はベンガル人の得意アイテムです。それにバングラデシュの国魚イリッシュのから揚げ、ボッタ、鶏肉のカレー等。
 元バングラデシュ大使のハク夫人が親戚、知り合いなどを十数名、客として招待して下さいました。
抹茶を飲む
 食事後、日本から持参した茶籠、大使邸で調達したバングラデシュのお盆、紅茶用ガラスのポット、ベンガル製真鍮ボールを建水として用い、テーブル茶のおもてなしを致しました。菓子は、鶴屋吉信の日本の夏の趣の干菓子を。通訳をつけて茶事の成り立ちなども説明をしながら行いました。
 今回は、ハイソサイティの人々の集まりで、大学教授、ハーブの研究者等の方々から、とても興味を示され、大使夫妻も日本の生活を懐かしんでおられ、大使邸で働く若者も、とても興味を示しておりました。
抹茶を飲む2
 村の中に一歩足を踏み入れると、農作業に勤しみ茶飲み話に興じる男性や、炊事洗濯と子育てや家畜の世話に忙しく働く女性たち、そこら中で元気に遊び回る子どもたちの姿に、都市化と近代化が極限まで進んだ日本から訪れた我々は「自分たちが失ってしまったもの」に気づかされました。もちろん、それは一面で、我々が想像できない厳しい現実に直面しているのですが。
 この度は、財団法人日本財団の社会ボランティア賞の推薦により、当地を訪れることになりましたが、この茶事がバングラデシュでの糸口、文化の懸け橋になればと願っています。
 この茶会を催したことで、現地の女性支援の方から、バングラデシュの女性にテーブル茶の作法を、という話が持ち上がっています。

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2011年8月7日

上越はすまつり茶会

関宗栄(高田不白会)

はす祭り会場
 去る八月七日、市の行事の一環として観蓮茶会を担当させていただきました。野点ですから前日の準備ができないので朝六時と早く、お茶席は八時から十二時と短時間ですが、充実したひとときでした。涼しさを感じられるようにが、お道具組のテーマです。私の先生の小川支部長とその社中の方々にお手伝いをしていただきました。
中学生お点前
サポーターをしながら一生懸命にお点前
  私の社中の一人は小学二年生から稽古に来、紅葉のような手で工夫して服紗を畳み、お点前をしていたのが今は中学生になり、この茶会のお点前をいたしました。クラブ活動等大変になって前日に足を捻挫し、サポーターをしてのことでした。高校生になっても続けられるよう願っております。社中も今は大分慣れてきまして喜んでいます。
 会場は時折お堀の蓮の花が揺れ葉がうねり涼風が吹き一服の清涼剤でした。お茶関係の方々、一般市民の皆様、観光で訪れた方々、大勢の方においでいただき、感謝でいっぱいでした。

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2011年7月31日

観蓮茶会

田村詠雪(高田不白会)

野点席風景
道具拝見
 東洋一の美しさと賞されている高田公園のハスは、季節の風物詩として広く市民に親しまれています。七月上旬から紅白の花が咲き乱れるこの絶景を愛でて毎年はすまつりが開催されます。はすまつりには観蓮茶会が催され、一日目の七月三十一日は江戸千家が席を受け持つこととなり、初めて茶会を担当いたしました。
 真夏の暑さに少しでも涼を取り入れる工夫はあるだろうか。お受けしたものの亭主の役が無事務まるだろうか、日が近づくにつれて不安が高まりました。
 席を設ける近くの蓮の花咲きが遅く、心配しましたが、間に合うように咲いてくれました。夜中には雨も降りましたが、朝方には雨もあがり茶席の開会には間に合いました。そんなこんなで、最初の挨拶ができるまで緊張しておりましたが、皆様に助けられて無事に担当することができまして感謝しています。

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2011年6月28日

福島不白会 二十周年記念の食事会

白井宗節(福島不白会支部長)

初代支部長徳山先生を囲む
初代支部長徳山先生を囲む
 二十周年の記念式典・茶会は中止する事が決まりましたが、宗匠や宗康先生のお勧めもあり、被災した会員にも協力してもらい、記念の食事会を行いました。周辺の状況を考慮して洋服での出席を通知し、気軽に二十周年を祝うことにしました。
 六月二十八日、新白河駅前のホテルに宗匠、宗康先生をお迎えし、また初代支部長の徳山宗玉先生も車椅子で出席して下さいました。
 宗匠からは二十周年を祝うお言葉と、東日本大震災の被災のお見舞いの言葉をいただきました。徳山初代支部長が会の基礎を築いてくれ、岩谷前支部長が充実した会に育ててくれて福島不白会の現在があることを改めて思いました。
  被災以後、福島原子力発電所の状況が深刻になり、どうしても気が沈みがちで、地域の茶会も中止が多く、会員同士、なかなか顔を合わせることができません。皆が一同に集まる事ができ、ほっとしたとの声を聞きました。かつて家元教場研究会に参加していた現在八十歳を越える会員は、気軽に皆様とお話ができたことをとても喜んでいました。
 宗匠が「義 すじみちをたてる」という自筆の色紙を贈呈して下さいました。さまざまな思いをもって各人この言葉を胸に刻んでいるようでした。
 食後、宗匠がお持ちくださった「青梅」を味わい、お薄を一服。ほっとしたとき、宗匠が横笛を聴かせて下さいました。 本当に癒されました。 宗康先生には、講演をお願いしておりましたので、研究された一部をお話しいただきました。
 短い時間でしたが心に残る楽しい食事会になりました。
 その後、記念に準備した「松籟」の扇子を、出席していただくはずだった近隣の支部に、式典中止のお詫びとともに贈りましたところ、お見舞いや激励のお言葉をいただました。
 震災以来、気力を失っていた会員が、この食事会に出席して自信がつき、その週からお稽古を再開した方がいました。 私も気持ちの整理ができないでいましたが、大規模半壊の自宅を建て替えることにしました。皆様の力強い励ましのおかげで、一歩前に進めようと考え始めています。
記念写真
一堂に会して記念写真

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2011年5月15日

◎繋がっていく力

幸田宗陽(福島不白会)

野点
 震災後の無気力の気持ちを、護国寺のお茶会で吹き飛ばされ、帰り道、今日いただいたこのエネルギーを無駄にしてはならない、被災された方をお招きしようと思い、もうこれで終わりと一瞬覚悟したという方をお正客に、職場が罹災し、仕事を失った方をご次客に、家が流された兄弟ご夫婦をこの地に安住させた方を、お三客に、五月十五日、花見の茶会と称して行いました。
 朝、亭主役をお願いし、お庭を提供して下さったH様宅へ。前日、ご主人様と共に、駐車場を水洗いし、ソファーをセットしてくださったその位置からは、50アールに植えたばかりの早苗が、揺れる水田を背に樹齢五十年を越えるぼたん桜が、八割方花を落とし、地上には花筵に、水田には花筏にと装い、その周りには藤、つつじ、あやめ等々、花の歓迎を感じました。
 今日は、初座:料理は美しく盛ること、華やかに。後座:濃茶はたっぷりと少し薄めに、寂に。
 そしてお客様にまた来たいと思える様、心を込めてお接待することを確認してはじめました。
桜
 招く側は一人一品を一皿に美しく盛ること。
 お客様には取り皿に、一品ずつ美しく取り回すことをお願いしました。
 隣の人の盛りつけを見比べながら真剣に悩む姿をほほえましく思えました。お話はやはり料理の材料、作り方に関心が集まり、三客お持たせの早池峰山麓白ワインをいただきながら盛り上がりました。
 深見草の主菓子をお出しして中立ちへ。
 高桐院を訪ねた時、お願いした記念の扇面。剛山書、「柳緑花紅」をお軸に、村上市の九重園、うきふねを二寸小棗に入れ、包服紗にして盆に飾り、濃茶を点てました。
 約束通り、絵唐津の円相の茶碗にたっぷりと少し薄めのお茶をお出しすることができました。
 お薄が終わる頃、残された二割の桜の花びらが天から風に誘われて舞い散りました。歓声をあげ「さようなら、又、来年まで、ごきげんよう」と言われているよう、と言い合いました。つられて見上げた空は五月晴れ、絹のような薄雲が鶴を形どって北に向かって飛んでおりました。

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