江戸千家 >  不白会だより > 本番のお茶事が研究会

2011年4月20日

本番のお茶事が研究会

家元招請研究会−【茶事実践】

渡辺宗倫(神戸同好会)

入席後一献
遠方の客を迎えて、歓迎の一献
 神戸同好会が船出して、二回目の家元招請研究会が 四月二十日に行われました。神戸は人数が少ないので茶席は一席のみで、私共の茶室にて実践いたすことになりました。
 お家元様は八女不白会から神戸入りをされ、随行に『落暉残照』の筆者であられる足立淳雪氏を伴ってお越しになられました。足立氏は家元教場で二十年来の私の大先輩であり兄弟子に当たる方です。拙家には初めてのお越しですので、さっそくお正客は足立兄にと決めさせていただきました。ならばお次客はやはり遠方よりお越しいただける岡山支部の平野宗靖氏になっていただき、三客には社中から一名を決め、これでお客の三名が決まりました。
 お稽古茶会とはいえ、遠方からお客様をお迎えすることになり、私には本番のお茶事の実践となりました。
 日取りとお客様の顔ぶれが決まると、当日を迎えるまで私の頭の中は昼も夜も、床の飾り、道具のこと、料理のことで一杯になり、何度イエス、ノーを繰り返したことでしょう。果たしてこの迷いの苦しみの果てに何が残ると言うのでしょうか。
 とうとう後戻り出来ない茶会当日を迎えました。寄付きは不白と如心斎ゆかりの玉林院ご住職森幹盛氏筆の「無事是貴人」の色紙を掛け、お床には、お家元様の「一座建立」の軸。これは亭主役を仰せ付かった時に決めていました。
記念撮影
研究会を終えて記念撮影
 初座の挨拶は稽古では形式的なやり取りになりがちですが、今日は本物のお客様をお迎えしましたので、和いだ雰囲気でスタートすることができました。もうすぐ炉も終わるので透木に不白好みの富士形羽釜を懸けて、お棚は霞棚に舞子焼きの四方水指を飾り、向こうには遠山絵の風炉先を置きました。
 お炭点前の後、一献のご挨拶をして、膳の運び出しとなります。八寸程度の膳なので、皆様あっという間に召し上がられてしまい、お家元様からゆっくりと会話を楽しみながら、お酒を味わい時間をかけて食べてくださいとご指摘がありました。
 後座の席入りの後、クライマックスのお濃茶です。釜の蓋を開けると富士釜から垂直に湯気が立ち上り、お煮えが付いてよかったと安堵しながら自服いたしました。
 お正客様がお話し上手でタイミングよくリードして下さいました。次客様にも助けていただき、楽しいお席にして頂き感謝です。お客様の力って偉大です。大変勉強になりました。
 先にこの迷いの苦しみの果てに何が残るのかと自問しましたが、今日の答えは「遠方より友来る、また楽しからずや」でした。
 今年、家元教場研究会では茶会記の読み合わせを行っています。研究会の締めくくりとして、倣ってこの度の自会記を書いてみようと思います。

カテゴリー:研究会/家元招請研究会 「本番のお茶事が研究会」のリンク