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2023(令和5)年 孤峰忌

江戸千家 花月の間
十一月四日 (土)

 十一月四日、恒例の孤峰忌が江戸千家家元にて執り行われました。
 読経の後、家元による供茶点前と新柳氏によるお香の点前があり、天目茶碗に点てられた口切りの抹茶とお香が流祖の像に供えられました。
 続いて今年の講話は、前静嘉堂文庫美術館館長で『國華』編輯委員である河野元昭先生による、江戸千家蔵の「宗達白鷺図」と「岩松図屏風」についてのお話でした。
 点心の後広間では口切りの濃茶が、蓮華庵は家元直門長井宗渓氏担当で口切りの薄茶が振る舞われました。本年は流祖の二百十七回忌とのこと。積み重ねてきた歴史の長さを感じつつ、新たな口切りの茶を静かに味わった一日でした。
家元による供茶 新柳氏による供香

家元による供茶 新柳氏による供香

蓮華庵 床

蓮華庵 床

呈茶

呈茶

伝宗達白鷺図

伝宗達白鷺図

一円庵床

一円庵床

教場

教場

  花月の間 濃茶
床 不白筆三幅対「假 空 中」
  不白塑像
   前に 不白好 竹 三具足
  花 白杜鵑 秋明菊
    数珠珊瑚 刈萱
  呂宋真壷「南山」不白旧蔵
 供茶 星の奥(口切り茶)
  瀬戸尻張茶入
  茶杓 真塗
脇 国分寺経     奈良時代
 炉開
及台子飾り
 皆具 亀紋瑠璃染付
 釜 責紐釜
 呈茶 
  鶏頭棗   塩見政誠作
  茶碗 御本 刷毛目
     赤楽 旦入作
  茶杓 蓮々斎「月星」
  御茶 口切り茶「星の奥」
          星野製茶園
  菓子 「空也餅」 銀座空也
  一円庵
床 不白辞世
  銅製経筒     平安時代
  花   西王母 花水木

  教 場
 「伝宗達 白鷺図」
 岩松図屏風   十七世紀 

  蓮華庵
床 不白筆 達磨画讃
   桃栗三年柿八年 
    面壁九年一夜夢
花入 竹掛花入 「一声」 一元斎
花  数珠珊瑚 つりがね鉄線
釜  板風炉 霰やつれ釜 
水指 高取細水差
茶碗 出雲焼 銘「天の戸」 
          四代新柳斎
   黒楽 半筒 左入
茶器 黒棗 一元斎
御茶 星の昔    星野製茶園
菓子 吹寄せ     亀屋伊織

●「宗達白鷺図」「岩松図屏風」について

【要旨】

前 静嘉堂文庫美術館館長 /『國華』編輯委員 河野元昭

◎岡倉天心が明治二十二年に創刊した『國華』は、現在も刊行されている世界で最古の美術雑誌で、第137号(平成二十二年)にこの「白鷺図」が掲載され、私は「伝俵屋宗達筆白鷺図」という題の解説を担当した。白鷺が一羽、葦の生える水辺に片足で立ち振り返っている。外は隈取りで鷺の身体は紙の白さを生かしてある。薄墨で足を描き、葦の部分はたらし込みの技法を用いる。この技法は、人為を超えた自然に任せる効果で、日本には好まれる。
 落款がないのは、もとは押絵貼屏風だったものをバラして一幅に仕立てられたからかもしれない。最初と最後の扇以外の部分には印や落款はない。
 宗達の出自はあまり知られていない。法常という高い位を得、後水尾天皇の文化圏で活躍していた絵師であった。白鷺は普通によく見られた鳥であるが、この絵は単なるリアリズムではなく、純白、汚れなきものの象徴など、形而上的な哲学的意味合も込められた作品と思われる。
◎桃山時代は、屏風や障壁画の黄金時代であり、金銀濃彩の技法を用いたきらびやかな作品が多く生まれた。桃山百双とも称される。障壁画と屏風はともに間仕切りで空間をしきるもの。金銀が好まれたのは、一説には当時は部屋が暗かったからという説もある。
 この「岩松図」。様々な手法を見て取れることから特定の流派に属さない、町絵師のグループの作ではないか。町絵師は独学でいろいろなスタイルを取り入れて絵を描き、落款は入れない。
 宗達も最初は町絵師で出発した。絵屋と呼ばれる絵を売る店で、力量を買われ光悦に見いだされたという仮説も成り立つ。経済力を得た町衆が、自由に好みの絵を求め楽しむようになった時代背景もある。この屏風を描いた町絵師も画力をもち、おそらく取り立てられて活躍したことと思われる。

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