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東京茶道会月釜招待茶会

平成31年2月11日(月・祝)
於 音羽護国寺 不昧軒
主 川上宗雪

 建国記念日恒例の招待茶会。宗雪宗匠は不昧軒に釜を掛けられました。遠州流の森田知実様に席に入られた感想をお寄せいただきました。

賓客お二方を迎えて

●不昧軒に入席して

               遠州流 森田知実

 毎年建国記念日に行われる東京茶道会招待茶会は、そのご案内をいただいたときから春を待つときめきと同じように心躍ります。江戸千家ご一門のあたたかなおもてなしによる宗匠のお席は、大寄せでありながらも茶事にお招きいただくようです。
 平成最後となる今年は、不昧軒にて釜を掛けられました。時折雪の舞う空の下、喚鐘の澄んだ高い音色が五回響きわたります。心を清らかにして、入席!
 正面の床には「改年の御慶」で始まる小堀遠州の書状。遠州の故郷とも近い近江・膳所城主に宛てたもので、膳所焼や朝鮮通信使に関する記述があります。古銅花入には赤の椿、龍のように力強く張られた梅の枝には蕾が白く輝いていました。
 点前座の寄木で丁寧に作られた逢雪棚は、宗匠が古稀の際に静嘉堂文庫所蔵の猿曳棚に着想を得てお好みになったとのこと。七宝の水指が色鮮やかに座を彩ります。広口の釜の蓋が開かれ白い湯気が十分な湯加減を伝えた時には、外の寒さをすっかり忘れ別世界に夢中になっていました。
 茶碗は釉流れが大変に美しい膳所光悦が用いられました。箱は寄木で七宝紋が象られ、遠州流ご先代の紅心宗慶宗匠が「寛永十三年品川における家光公へ献茶の際に本阿弥光悦に依頼した膳所光悦と同手の一品」と丁寧に書付をされています。床の遠州書状のような注文や指導など、当時の往来を想像致しました。
 茶器は勝軍木庵の瓢づくし蒔絵。瓢箪は遠州公や不昧公のお好みで、〝水の上の瓢を押すが如く、道に達した人は同じところに留まらない〟という意味の禅語から来ているともいわれます。茶杓は遠州流十一世・其心庵宗明宗匠作で、まるで今日のために削られたかのように「春の淡雪」の歌が添えられたものでした。
 主菓子は、越後屋若狭製「丹頂」。江戸を代表する老舗である同店と不昧公のつながりなど興味深い話を聞かせていただきました。お茶はお好みの八女・星野製茶園の「星授」を、宗匠が考案された和韻点にていただきます。丁寧に練られたその甘く香り高い贅沢な味わい! 葡萄酒を期待したお客様も大変にお喜びだったのは言うまでもありません。
 膳所焼を含む数々の国焼を育てあげ、きれいさびといわれる茶の美学を世に広めた小堀遠州、「諸流皆我が流」と、他流の素晴らしいところからも積極的に学びとった松平不昧、さらに豊かなお茶のあり方を追求される川上宗雪宗匠。その強い志に共通の心を感じ、江戸千家流「きれいさび」を十二分に堪能させていただきました。

【会 記】

 和韻点     
床 小堀遠州 消息 
   改年の御慶 云々
 花  明石潟 豊後梅
 花入 古銅 四方龍耳 
脇棚  喚鐘 「阿吽啐啄」在銘
      盆石  「不二」
 釜  広口 立筋 長野 烈作
 炉縁 長熨斗蒔絵
棚 古稀好
  逢雪棚      山田嘉丙作
 水指 古七宝
 茶入 瓢尽し蒔絵 
     平棗 帛包にして
          勝軍木庵作
 茶碗 膳所光悦  成趣庵箱書
 茶杓 小堀宗明作
         歌銘 春の淡雪
 数茶碗 唐津   中里重利作
  建水 塗曲
  蓋置 染付 福寿紋
 御茶  星授 八女 星野製茶園
 御菓子 丹頂 本所 越後屋若狭
  器  九谷 椿絵小鉢
     柿右ヱ門 小鉢

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