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第37回東京不白会夏期講習会

平成30年6月23日 (土)
於 牛込箪笥区民ホール (新宿区箪笥町)

 今年の東京不白会夏期講習会は、会場を新宿区箪笥区民ホールに移し、二年ぶりの開催となった。
 日本野鳥の会・主席研究員で、野鳥や自然観察、環境教育などをテーマに活動をされている安西英明先生には、身近な野鳥を見る楽しさ、自然の仕組みについてお話していただいた。
 宗雪宗匠は、没後二百年になる松平不昧公の二通の手紙を読み解きながら、流祖不白との関わり、不昧の人間像などについて話された。内容の一部を紹介します。(詳細は東京不白会会報『池の端』七十二号に掲載)

会場風景

■どこでも野鳥ウォッチング

─身近な自然と季節を楽しむ

安西英明先生

安西英明先生

安西英明先生

 スズメは卵を五、六個産むが、五つ生むのに五日かかり、五つ目の卵は大きさが違い止め卵と言われ抱卵に入るタイミングとなる。二週間で孵化し、巣立ちまでの二週間、親は子に四二〇〇回、虫を運ぶ。実に一日三百回、三分に一回の割合である……。安西先生は、多くのエピソードを身振り手振り、ユーモアを交えながら話された。
 普段は種を食すスズメが、子育ての時期に虫を採るということ、四季のある日本の春のは昆虫が爆発的に増えるため、子育てをするために渡り鳥が命がけでやってくるという事実。身近な鳥達の驚くような暮らしが、人間と同じ日常に繰り広げられている。先生のお話はスズメ、カラス、ホトトギス、ツミと多岐に渡り、鳴き声や行動パターンどれをとっても理由があり、すべての鳥が懸命に生きている姿が伝わってきた。命を繋ぐという事が、一方では他の生物の命を奪うことでもある生物の世界の現実も見えてくる。「季節感」という言葉の意味に〈命の営みが繰り返されること〉という奥行きが生まれたようなお話であった。

■松平不昧と川上不白

─二通の手紙から

川上宗雪宗匠

 松江藩七代藩主松平不昧(治郷)は、江戸生まれ江戸育ち、十七歳で藩主となる。和歌俳句、武家としての教養に秀でていたが、大名茶人と云われるほどに茶の湯を極め、茶道具の収集と研究に功績を残した。今年は没後二百年という節目で各美術館で多くの展覧会が開催された。
 流祖川上不白と不昧との交流を示す記録は、寛成十一(一七九九)年、不白が品川東海寺に不昧を招いた茶会記であるが、
家元講演

手紙を解読する宗雪宗匠

その事実を裏付ける不昧の消息が一通めの手紙。「十六日ニハ不白東海にて茶御座候」東海寺での不白の茶会に参加するかどうかを義弟の朽木昌綱に尋ねている。この手紙には、京都や江戸の出入りの道具商のこと。青井戸茶碗を入手したこと。お抱え力士の話など、不昧の人柄や当時の社会の様子まで読み取れる貴重な手紙である。
 もう一通は、玉林丈室に充てた不昧晩年と思われる手紙。当時大徳寺大仙院にあった「流れ円悟」の墨跡を拝見したいという一文が含まれる。この円悟克勤筆「虎丘昭隆宛印可状」は、茶人が憧れる禅僧の墨跡の第一。不昧は名品の所蔵元を尋ね歩いており、大徳寺にも茶道具名品を見に訪れたことが知れる。今年三月の京都玉林院月釜で、宗雪宗匠はこの不昧の手紙を床の間に掲げた。
 宗匠は手紙にまつわる道具や人物について映像を用いて話され、最後に「流れ円悟」の読み解きに挑まれて、「直指人心」は、禅にも茶の湯にも共通すると講演を終わられた。
・本誌123 号Teatime「三月七日の松平不昧の手紙」(谷村玲子著)に、第一の手紙が詳細に解説されています。

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