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第69回 東京不白会春の茶会

平成30年4月1日(日)
於 音羽護国寺茶寮

■ 月窓軒

家元席
 今年は早い春の訪れで、桜も名残。明るい日差しの中、恒例の春の茶会に多くの参加者があり、趣向の凝らされた七席を楽しみました。
 毎年参会される村上瑛二郎氏に家元席の感想を、また、今回初めて席をもたれた江戸千家不白流家元川上渭白宗匠に文章を寄せていただきました。

●家元席を拝見して

 春の不白会家元席は、毎年ご趣向が変わる。昨年は席中に幕末を描き出されたが、今年はと楽しみに伺うと、床には華やかな桜が咲いていた。その散るを受けたように、古染付の水盤に浮かんだ花片が何とも艶やかである。点前座は何と風炉、珍しい絵御本の菱水指の白さが、芦屋の釜肌の綺麗さを引き立てている。二つ置きの長板が、すっきりと瀟洒だ。例年と違い、コートも不要な暖かさ、風炉は五月からという常識をうち破り、時宜に則したおもてなし、当方の陳腐な頭では思いつけない。同時に「広間は本来、風炉のもの」という古人の言を思い出した。重苦しくない三島茶碗に、素直な感じの瀬戸茶入、この席にこれ以上適した銘はあるまいと思われる茶杓、珍しい蓋置など、いずれも眼福を得たが、思えば、この季に、これほど爽やかな濃茶席に参じた事はない。よい経験をさせていただいた。脇床に飾られた不昧候所縁の茶箱をじっくり拝見する余裕のなかっったのは残念だったが、他のお席の設えも満足で、家元の好まれたという喚鐘が何席目かの客を呼び入れる清音を聞きつつ帰路についた。

  音羽の春喚鐘に聞く茶の心

                      村上瑛二郎   (茶の湯文化学会会員)
酒井道一筆 桜樹 水面に散らした花びら

正客は、徳川慶喜曽孫・前靖国神社宮司:徳川康久様と奥様の静江様

釜

【家元席 会記】

寄付
 月光殿 大広間 
      自作の短冊句 並べて
 菓子 春の流れ  越後屋若狭製

本席 濃茶
床  酒井道一筆 桜樹
 花 花びら 水面に散らして
花入 古染付 水盤
 脇棚 茶箱  不昧公和歌有り
           勝軍木ぬるで庵作
   こぬまも花ゆ人の待れつる
    春もくれぬるミやま(深山)へのさと(里)
 長板飾り 
 風炉 唐銅 道安 
 釜  伊勢芦屋 筒 
    十牛図 
 風炉先 杉木地 遠山
 水指 絵御本 菱型
 茶器 瀬戸 尻張り
 茶碗 御本三嶋  
 茶杓  一元斎作    銘 桜狩り
  建水   モール   浄益作
  蓋置   因久山焼  竹節形
 茶  雲鶴 丸久小山園詰

■ 牡丹の間

湧井荘吉席

■ 艸雷庵

播磨弘造席
不白筆 富士画賛

その他の席主は以下の通り。
艸雷庵……播磨弘造   牡丹の間…湧井荘吉
楓の間…長谷川宗純   宗澄庵……石橋宗苑
不昧軒……森田宗杲

*東京不白会会報『池の端』71号に詳しい報告が掲載されています。
 各席の様子は、春茶会写真レポート のペ−ジでも見られます。


■円成庵   

 川上渭白宗匠席
川上渭白宗匠 円成庵床

●東京不白会初の茶会 円成庵担当席主となり

 春在百花秋在月 夏有涼風冬有雪
 若無閑事掛心頭 即是茶人好時節

 文中本歌は『茶人』ではなく『人間』無門関十九則「平常心是道」に対する無門禅師の頌を不白居士の弟子である当流初代亭々庵渭白居士が、『朝霧』『夕立』『良夜』『寒暁』の四本組み四季茶杓を入れたる箱蓋に記したものです。茶人たる者此の様に五感をフル活用し、各時節を感じ取り味わい乍ら日々を暮らしたいと思っております。しかしまだ私は『閑事』が常に『心頭』に付きまといこの様な境地に至ることが出来ません。ひいては「平常心」もほど遠い所にあることを、今回の茶会において円成庵の席主を務めさせていただき、この中の茶杓(朝霧)を使うことによって改めに痛感致しました。閑事を心頭に掛けることなく日々過ごさねばと自戒しております。
  向学の視線飛び交う春茶会
            珍竹林
                    江戸千家渭白流家元
                     竹聲庵 川上渭白

【円成庵会記】

床 如心斎筆 槌 画賛
 香盆 銘 乙御前    道八作
 花  貝母 都忘 雲龍柳 
 花入 青備前
 釜  透き木 平蜘蛛 庄兵衛作
 炉縁 黒柿
 水指 古瀬戸 銘 木曽路  
       七代渭白竹翠庵好
 茶器 雪輪蒔絵   三代宗哲作
 茶碗 玉水焼 銘 黒駒  
        二代渭白心月斎箱
 替  春日閑々 劉生絵 
 茶杓 銘 朝霞  
        初代渭白亭々庵作
  建水 唐銅毛織    浄益作
 蓋置 竹引切り  
            不白花押
茶  音羽の白     三丘園詰
菓子 半生白象 早蕨  ささま製
器  四方盆       近左作

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