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平成二十九年 孤峰忌

江戸千家家元邸
十一月四日(土)

 家元邸での恒例の孤峰忌は、仙台国分尼寺小枝一誠和尚による読経から始まり、続く家元による供茶点前で天目茶碗に点てられた口切りの抹茶が流祖不白の塑像に供えられた。棚は、昨年家元が好まれた逢雪棚が用いられた。
 今年の講話は、柿衞文庫館長、岡田麗先生で、「俳諧と茶の湯」と題しお話をいただいた。  午後は花月の間で口切りの濃茶(星の奥)が振る舞われ、蓮華庵では、東京不白会理事小林宗淳氏担当により口切りの薄茶が供された。好天の下、七十人以上の参加者がゆっくりと楽しみながら、流祖を偲んでいた。
家元の点前による供茶

家元による供茶

飛石自画賛

啐啄󠄁斎 飛石自画賛

茶はあら(荒)
かく(角)の数とる
さしき(座敷)かな
花月の間 濃茶席

花月の間 濃茶席

中村芳中筆 鹿図

教場床

蓮華庵床

蓮華庵床

講話

講師 岡田 麗 先生

■講話 「俳諧と茶の湯」概要

 柿衞文庫(兵庫県伊丹市)は、三大俳諧コレクションの一つと評され、実業家で、国文学者の岡田利兵衞(雅号:柿衞)から寄贈された貴重な資料を保存展示している。昨年秋、『俳諧と茶の湯』という企画展の際に江戸千家所蔵品も出展され、この講話が実現した。
 岡田先生は、茶の湯と俳諧が互いに影響しながら発展してきた経緯や、それらを表している作品を紹介しながらお話くださった。
 元来茶の湯は和歌と関わりがあり、小堀遠州は新古今和歌集など古典を利用した茶道具の銘を箱書きに記し、道具を拝見する場であった茶会に、文学性がもたらされた。連歌との繋がりも深く、連歌で禁じられる話題を利休は茶会での戒めとして利用している。
 利休から百年後の覚々斎の時代になると、茶の湯も俳諧も一般大衆に広まり、双方に携わる人が増えてき、俳諧でもっとも重要視される季節感が茶の湯に影響を与えた。また、俳諧も茶の湯も人々が寄り集まり、作品を作ったり一会を成立させる「座」という概念があり、共通の価値観を合わせもつ。茶人が俳諧を嗜み、俳人が茶の湯に携わる例も多い。
 この他覚々斎、堀内仙鶴,如心斎や流祖不白など、俳諧の発句が刻まれたり記されたりする作品の紹介、また、有岡同瑞、鬼貫といった伊丹を代表する茶人、俳人の作品、そして柿衞文庫創始者岡田柿衞にまつわる俳句と茶の湯の話など、茶の湯と俳諧が分かちがたく結びついているお話を聞くことができ、宗匠も茶事で俳句を作ることを復活させたいと話された。

【会 記】

■ 寄付
 句(虚子) 狐画(小川芋銭) 
  遠山に日の当りたる枯野哉

■一円庵
床 不白辞世
          下ニ 黄瀬戸香炉

■花月の間 濃茶
床 孤峰不白筆三幅対 假空中
   不白塑像 三ツ具足
    花 椿(初嵐 妙蓮寺)
      野紺菊  苅萱
      白の藤色藤袴
    供茶 星の奥 (口切り茶)
    供菓 空也餅
  不白所持 呂宋茶壺 号南山
 脇床 啐啄󠄁斎 飛石自画賛
  棚 好逢雪棚
  釜  桐紋宝珠釜  浄清造
   炉縁 真塗雪輪紋
  茶入 瀬戸尻張り 
  茶碗 不白手造り 赤   
  茶杓 蓮々斎作 「月星」 
  御茶  星の奥 八女 星野製茶園
  御菓子 空也餅 銀座 空也製
■蓮華庵 薄茶  担当小林宗淳氏
床 沢庵宗彭消息
   松茸の礼状
 花  万作の紅葉 嵯峨菊
 花入 干瓢 名心庵作「一笑」
 香合 キンマ   
 風炉 鉄 大やつれ
 釜  十牛図筒形
 水指 信楽
 茶入 蔦 金林寺 不白在判
 茶碗 一入 黒
  替 備前 金重陶陽作
 茶杓 一元斎作  銘 錦
 御茶 星の昔(口切り)  星野園
 御菓子 吹き寄せ    亀屋伊織



■教 場
床 中村芳中筆 鹿図   不白賛
   黄葉み落て
    そろ〳〵鹿の
     開炉かな

  古材長板に
   庭の柿実と栗

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