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第68回 東京不白会春の茶会

平成29年4月2日(日)
於 音羽護国寺茶寮

 第68回江戸千家東京不白会春の茶会が、4月2日、音羽護国寺で開催されました。桜の満開も間近、好天に恵まれ明るい日差し溢れる一日でした。
 趣向の凝らされた七席に釜が掛かりました。一部を紹介します。

■ 月窓軒

家元席
月光殿

 家元席は道具の取り合わせに趣向が凝らされるだけでなく、大寄せ茶会としての演出で入席者をいつも楽しませてくれる。  今年は月光殿を寄付とし、上段の間に福澤諭吉の扁額を掛け、隣室の書院の間には岩松図屏風が設えられて、一席ごとに篠笛が奏でられる。奏者は藤舎理生師。そして入席の合図として喚鐘が打ち鳴らされた。

 本席の床は、幕末維新の立役者の一人、勝海舟の七言律詩が掛けられた。脇床には幕府軍艦「咸臨丸」に見立てられた宝船が置かれている。遣米使節団を乗せた咸臨丸には勝海舟と福澤諭吉が同乗しており、あらためて寄付の扁額が思い浮かぶのである。

 炉辺に目を向けると、道仁の十王口の釜、棚は家元が古稀の記念に好まれた逢雪棚が設えられている。地袋の中に納められた七宝龍紋の水指がいかにも美しく映えていた。

 古九谷菊紋大皿に盛られた菓子をいただき、古薩摩の茶碗で茶を飲みながら、ご亭主との会話が弾む。

勝海舟の七言律詩
【家元席 会記】
寄付 月光殿
 床  福澤諭吉 扁額
     「大幸似無幸」
 屏風 岩松図 六曲一双 十七世紀
    篠笛演奏 藤舎理生師

本席 月窓軒

 床  勝海舟   七言律詩

千山万峰凝寒晶 風捲微雪壮此行
丈夫従来只血性 不求聞達豈貴栄
加何碌々希如玉 亦落々不成瓦甍
淡然滋味更如水 踏破浮塵一身軽
          海舟居士 印
  辛未歳晩 途中逢雪

     (明治四年 海舟 四十八歳書)
  脇  宝舟(見立咸臨丸)
  花  枝垂れ桜 山茱萸
  花入 胡銅     長野烈 作
 炉辺
  釜  道仁 十王口
  棚  逢雪棚   山田嘉丙 作
  薄茶器 不白好大燈紋 在判棗
  水指 七宝 龍紋    明時代
  茶碗 古薩摩 銘「尚武」
   替 萩   坂高麗左ヱ門 作
  茶杓 七代 蓮々斎作 銘「月星」
   建水 塗曲
   蓋置 古染 墨台  松下軒箱
  御茶  千代の昔  味岡松華園
  御菓子 春鹿   谷中 喜久月
   器  古九谷 菊紋大皿

■艸雷庵   

はごろもフーズ 後藤康雄氏
後藤康雄氏 寄付 松永耳庵の茶杓 宗達画の伊勢物語
 席主は慶應出身で古美術、茶道具のコレクターとして知られる。
 寄付には福澤諭吉の横一行「独立自尊」が掛けられた。取り合わせの中には「陸の王者」と名付けられた黄瀬戸獅子香合、慶應出身の財界数寄者松永耳庵の茶杓から慶應好みの御茶、菓子とスクールカラーが映し出されている。
 本席床の宗達画の伊勢物語は圧巻。寄付床に飾られていた織部分銅形の主茶碗には誰しもが釘付けとなっていた。席主の嵯峨棗コレクションの一つ、柳桜蒔絵、面中次も披露された。名品揃いだが何にもとらわれることない取り合わせ。そして自ずと季節感が茶席全体に漂う。
 伊勢物語(業平)の歌
    世の中にたへて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
(川上宗康 記)

その他の席主は以下の通り。
 円成庵……田中宗恵    牡丹の間…森 祺雪
 宗澄庵……嶋崎聰雪    不昧軒……松本宗俊
 楓の間……白井宗喜・東京女子学園

*東京不白会会報『池の端』69号に詳しい報告が掲載されています。
 各席の様子は、春茶会写真レポート のペ−ジでも見られます。


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