江戸千家 > 行事の予定・報告(2011年) > 第31回東京不白会夏期講習会

第31回東京不白会夏期講習会

「家元の点前による茶事」

平成二十三年六月二十六日 (日)
於 江戸東京博物館大ホール

 本年度の夏期講習会は「家元の点前による茶事」が実演された。
 家元教場研究会においては、数年来、計画性をもって茶事の研究会が行われている。茶事の基本から茶事の中心となる濃茶点前。そして、正午の茶事、夜咄、朝茶がテーマとして取りあげられ、本年度は、点心茶事が実践的に行われている。
 一昨年の夏期講習会では、正午の茶事をテーマとし、本懐石の茶事の基本が実演された。
 今回は、家元が亭主役となり、主客の交流を主眼として行われた。特に初座では型にはまらない実演により、初座と後座という茶事の流れがよりわかりやすく、理解される講習会となった。
初座 話題が広がる 主客の挨拶
 初座のしつらえから、ご亭主の工夫の趣向。一行物の下に大きめの花なき籠花入。 主客の挨拶。その後、時間をたっぷりと取り、床の掛物のことから始まり、話題が広がっていく。主客、客同士の気持ちが繋がり始める。
一献の席 一献の席
 お膳が運ばれ、一献の席となる。亭主も膳を持ち出す。頻繁な運びに追われぬ点心料理。亭主は途中で引きこもることもなく、落ち着いて相楽しみ応対。お話も、文学から日常的な話題と幅広く、話に花が咲く。主客ともども、一献を勧め合う。茶の湯ならではの宴が繰り広げられる。
花所望
 膳が下げられたところで花所望。正客が花を生けられる中、ご相客もなごやかに話をしながら拝見。
家元による濃茶点前 客はほろ酔い加減
 後座。活けられた花を向こう掛けとし、家元による濃茶点前。客はほろ酔い加減の中で心地よき緊張感。
亭主も自ら点てた御茶を相伴 一味同心
亭主も自ら点てた御茶を相伴していただく。一味同心。

 このたびの講習会では、このような茶事の仕方もある、ということを、自然な流れの中で我々に語りかけてくれた。初座あっての後座あり、ということを観る者にわかりやすく伝えてくれた。そして、家元は、「皆さんも自ら工夫しておやり下さい、自分のやり方で」と投げ掛けられた。

 日本人は昔から人をあらためて自宅に招くということが、どちらかというと苦手らしい。ホームパーティーの盛んな西洋諸国に比べると、自宅の日常生活の場にあまりお客を入れたがらない。
 利休の時代、一部の豪商達は、商業都市の中にある狭い自宅の一画に、客を招き入れるために工夫した小さな茶室「市中の山居」を拵えた。時代の先端をゆくものであった。
 今の時代でも、人を招くことが茶の湯であることに変わりはない。茶室や客室が無ければ無いなりに工夫が必要だとよくいわれるけれども、まず、自宅に招いてみたい、という気持ちが生まれてくるのかどうか、であろう。茶の湯の稽古は、「人を招くこと」のハードルを高くしている面があるかも知れない。

 講習会の配布資料の中で、家元は、「基本的な茶事の一例を試みる。その流れの中で本質をよく見ていただければ幸いである」と述べられている。

出演者の挨拶

出演者一同、挨拶


©2011 edosenke
表紙へ歴史流祖茶室茶の湯のすすめ会報から不白会行事ご案内出版物事務局サイトマップ