江戸千家 > 会報から(134号) > 喫茶往来

喫茶往来


 宗雪宗匠の呼んだり呼ばれたりの茶会の様子を紹介します。

拝啓 時下ますます御清祥のこととお慶び申し上げます。
 先日はお招きいただき、まことにありがとうございました。かねてお願い申し上げた川上渭白様をご紹介いただき、感謝申し上げます。御所蔵の劉生作品を前にしてこころのこもったおもてなしと、宗雪様、渭白様とのたいへん興味深いお話の数々、なんとも豊かな時間を過ごさせていただきました。
 また、國華清話会からの依頼で書きました劉生の拙稿、ご意見がございましたら、お聞かせください。
 桐生は遠方で恐縮に存じますが、気候がよくなりましたら、どうぞお出掛けください。ご来館をお待ち申し上げます。
 三寒四温の季節柄、お身体御自愛ください。        敬具
 二月二十一日
                    大川美術館  田中 淳

渭白氏      田中氏

北極茶会

 川上宗雪さま
 ノルウェー最北のフィヨルドをヨットで航海しながら雪山を歩いています。
 北極圏のヨットの中で茶会を開き茶道普及に努めました。花は海草、軸は日本の桜をプリントした手拭いです。
 三月二十二日
                           瀬古伸廣

四月の月釜

 いつもお世話になっております。昨日はロンドンギャラリーの田島様のお供で嬉しい御茶にお招きを戴きありがとうございました。 桜吹雪の中を正に華供養ができました事、改めて御礼申し上げます。
 利休自死直前の文、庭一面の「苔衣」の長次郎茶碗、全てお心入れを下され、唯々恐縮に存じます。奥方様のお料理もおおいしく頂戴致しました。略儀とは存じますが、取り急ぎ御礼申し上げます。
 四月四日
   はごろもフーズ  後藤一楓居

四月の月釜

謹啓
 上野よりひとひら届く草の庵
 昨日の月釜、隅々までお心入れのお席でございました。厚く深く御礼申し上げます。寄付の不白の句にはじまり、利休、長次郎、そして琳光院の釜と、只々忝なく拝見しました。さらに奥様の手製のお料理、ご子息のさりげない半東の姿と、まさに茶家の真のあり様と心をまのあたりにいたし、感激ばかりにて帰途につきました。併せて、御高著まで賜り恐縮いたして居ます。花冷えの日もございます中、どうぞ家元はじめ皆々様おいといのうえ、益々御活躍あそばされますこと、心よりお祈り申し上げます。
  御礼まで                       敬白
 四月四日
                       筑波大学  石塚

過日は生涯はじめて経験する茶道にのっとったおもてなしと、友人としての暖かいおもてなしとの両方が深く心に沈んだひとときでした。改めてお礼申し上げます。
 又浦井さんの時空会でお目にかかるのを楽しみにしております。
 四月六日
                      医師  小堀鷗一郎

(御先祖 小堀遠州)

(御祖父 森鷗外)

土佐の高知

 寺田邸のお庭も新緑の季節に移り始めました。前日は記念館でのお茶会、お疲れ様でした。又、今回素晴らしいお歌の入ったお手紙本当にありがとうございました。
 静かな縁側で家元の素敵な笛の音を聴きうっとりしてしまいました。いつも変わらず元気な元は何かが良く判りました。季節の変わり目、御身体に気をつけて又のご来高お待ち致して居ります。
 四月八日
                 寺田虎彦記念館  伊東喜代子

上野開成会

 家元の高校同窓の誼で、江戸千家見学会にお招きいただきました。不忍池畔の賑わいから一歩入ったところに唐突に現れる、苔むした門の気品ある佇まいに、はてここに入っていいものかと、一瞬戸惑ってしまいました。
 少し汗ばむ初夏の昼下がりに、冷えた白ワインをつい飲みすぎてしまいそうになりますが、あとには茶席が控えています。本来茶席とは、客人を酒肴でもてなしたあとに、茶を点てるという構成とのことですが、「茶が締めにあるのはすごくいいんですよ。酔っ払ったりあまりに長尻になったりするのを防げますから」と笑う家元の言葉に、深く納得させられました。
 紀州藩士だった家祖からの江戸千家の歴史をお伺いしながら、ご家族の点てられたお茶のご相伴にあずかりました。以前お伺いしたときは、肌寒い二月、しんとした空気の中に火鉢炭のはぜる音が印象に残っていますが、初夏の陽気のもと感じる座敷の空気感は、まったく違うほころんだものでした。心なしか抹茶の味も柔らかなものに感じられます。一客の茶碗をとおしてこれほど季節の鮮明に感じられる経験を味わうと、次はまた違う季節の茶に親しんでみたいと、厚かましくも心が弾みました。
 四月二十九日
                   筑波大学   五十嵐 泰正

不参

 昨年九月つれあいが八十一歳九カ月の生涯を閉じました。いずれ別れの日が訪れるとは分かっていたつもりでしたが、いざその時になってみますと、目の前が真っ暗になり一時かなり落ち込んでしまいました。
 何かと思い通り生活できない中でも、最後まで笑顔を絶やさずおだやかに日々を過ごしていたその彼の姿を思い返しているうちに、エネルギーが身体に流れてくるように感じました。ヨガの御陰もあり徐々に立ち直りつつあります。
 思えばご親切に月釜のお招きを頂き、お家に伺えること、とても喜んで居りました。自身の足腰に段々自信が持てなくなり、結局断念せざるをえなくなって大変残念と常々申して居りました。大好きな茶の湯の世界にひたってほしいので、『ひとゝき草』を遺影に備えました。ありがとうございます。
 坂本忠雄様 伊藤明恭様を存じ上げております。どうぞよろしく御伝え下さいませ。
 末筆ながら御身体おいとい下さいますよう。ますますの御活躍、心からお祈り申し上げます。
 四月十八日
                           居初昭子

五月の月釜

 昨日は、五月晴れの良き日に月釜のお誘いをいただき、ありがとうございました。
 一円庵で家元のお話を伺った後、趣向を変えて教場でテーブル席での一献とお食事は大変有り難く嬉しく思いました。教場でゆっっくりと庭を拝見させていただき、青楓からの木漏れ日の美しさを 堪能させていただき感動を覚えました。お濃茶の席では正客お根来寺御座主に配慮され、根来塗の茶器をご用意いただき、嬉しく、家元初めご家族の皆様のお心配りを大変有り難く感謝申し上げています。
 五月九日                      石井正興
                             幸枝

人生これから

 「麗和」の御色紙、誠に有り難うございました。勿体ない思いでございますが、この上なくうれしく存じております。これから皆さんに御披露させていただき、共々に「麗和」の道を元気でふみしめて行きたいと思っております。
 蓮鶴先生や塙様のことなど、思い出しますと淋しくなったりいたしますが、折に触れ手を引いて下さる雲鶴奥様のお優しさにふれながら、九十七歳の私に先のことなどわかりませんが、よくばり婆さん、まだまだ御茶を楽しんで行きたいと思っております。
 十日ばかり前、中嶋さんのお茶室にお招きいただき社中みんなで楽しんできました。去年の秋には飯泉さんのお宅でのおいしい一服、戸井田さんの会席と、それぞれ楽しい日々を過ごさせていただいております。
   五月十二日
                           古川あい

六月の月釜

 梅雨の候 月釜に寄せていただき、誠にありがとうございました。久し振りでしたので緊張もいたしましたが、とても和やかで楽しいひと時でした。
 外待合より一円庵やお庭を家元と一緒に眺めることはめったにない事で、ゆっくりと時の流れを感じることができました。雲鶴先生の美味しいお料理は格別で、そして家元のお濃茶は正に至福でした。いつもながらの繊細なお心尽くし、深く感銘しました。ただ、本日のテーマ「恋」を悟る事ができず、深く反省しております。   かしこ
 六月八日
                           永野宗与

伊香保歌碑拓本

伊香保風 吹く日吹かぬ日
 ありといえど 吾が恋のみは
 時なかりけり(万葉集 東歌)

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