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■水屋日記 第13回

茶筌のこと(後編)

川上新柳

前号に続き、茶筌についての 後編です。

【製作過程】

① 片木(へぎ)

 まず、茶筌の長さに切られた竹筒の上の皮を剥いていきます。
 次に大割といって、縦に十六に裂け目を入れます(八十本立ての場合)。作る茶筌によってはこの段階で十二分割から二十四分割ほどになり、完成する穂数の基準になります。持ち手の先にある節を裂け目が越えないように、節より七ミリ~十ミリほど上まで裂けるようにします。続いて、こじあげと言って十六分割した部分を外側へ開いていきます。
 その後は頭入と言って、こじあげた部分の外側面と内側面の間に刃を入れていきます。節の所まで裂いた上で、内側面の部分は取り除いてしまいます。

竹筒の皮を剥く

こしあげ

36

頭入れまで
終了したところ

②小割(こわり)

 大割りの時に十六本に裂いた一本ずつを更に十本ほどに裂いていきます。この作業の際には、太い穂と細い穂が交互になるように裂いています。これにより、茶筌の上がり穂と下がり穂(外側の穂と内側の穂)がそれぞれ八十本ずつの、合計百六十本の穂になります。厳密に幅や裂き方を言語化できるわけではなくて、竹の太さなどの加減を見て裂き方を微妙に工夫します。

③味削(あじけずり)

 しばらく穂先を湯に浸してから、刃で削って薄くしていきます。根本が厚く、穂先に行くほど薄くなるようにします。どの穂をどれくらい薄くするかは随時工夫します。この作業により穂先が丸まったり、逆に真っ直ぐになったりします。つまり流儀毎、または使用目的ごとの穂の違いがこの段階で決まっていきます。通常、江戸千家で使っているような茶筌の場合、穂先は半紙の半分くらいの厚さとも言われ、百分の五ミリくらいになります。

④しごき

 穂を曲げたり強くしたりする過程です。高山では手でしごいていますが、海外では電気ごてで熱を使って曲げているらしく、手でしごいた方が弾力のある穂になります。

手でしごく

⑤面取り

 先ほど太い穂と細い穂の交互に割いた内、太い方の穂(上がり穂)の角を刃で面取りしていきます。点てた時に穂に茶が付かないように、また見た目が柔らかくなるようにといった理由があります。

⑥ 下編・上編(したあみ・うわあみ)

 ここまできたら、糸で穂の根本を編んでいきます。まずは下編みと言って、太い方の穂(上がり穂)に糸を掛けて外へ傾け出します。この下編み一周の後に、上編みとしてもう二周糸をかけます。

下編

⑦したて、腰並べ

 ほこりをふるい、穂の姿を整える作業になります。竹べらで下がり穂を内側に寄せ、上がり穂も乱れを直し全体の姿形を均等にしていきます。
 ここまでの作業は一人で全行程を行うのではなくて、現在は家族三人で工程別に分業して行っています。竹には個体差がありますが、できるだけいつも同じになるように制作しています。

腰並べ

【取材を終えて】

 かつては一子相伝で外には見せられない、教えられない事を細かく教えていただきました。  前編にも書きましたが、茶の湯を長く嗜んでいる方でも、茶筌の細かな点については知らないという方も多いのではないでしょうか。茶筌は、抹茶と湯に直接触れて、最終的な茶の完成に強く関与する道具です。つまり数ある茶道具の中でも特に重要な物の一つと言って良いでしょう。  普段からできるだけ良い状態で使えるように気を付けるとともに、茶筌の事にはもっと注目していきたいと感じました。  取材の後で早速に普段使っていない形の茶筌をいくつか注文して、点て心地の違いなどを試している所です。当たり前のように同じ形式の茶筌をずっと使っていましたが、穂先の違う茶筌でどのように抹茶が変わるのか試行中です。

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