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全慶應茶会

平成二十七年十一月三日(火)
根津美術館

披錦斎 床  福澤諭吉筆  七言詩

本席 披錦斎

茶杓 独尊
一樹庵 床  李朝民画  山水

一樹庵

 十一月三日の文化の日、東京都港区南青山の根津美術館にてひらかれた『全慶應茶会』に家元が釜をかけました。この茶会は慶応大学の茶道部である慶應茶道会と、そのOB組織である三田福茶会による茶会で、毎年ひらかれています。家元も慶応大学在学時には慶應茶道会の会員でしたので、毎年のように客として参加していました。今年はその席主の役目がまわってきました。
 根津美術館には素晴らしい庭園があり、その中にはいくつも茶室があります。茶室・弘仁亭は現役の学生たちが席を持ちました。家元が席を持ったのは、広間の茶室・披錦斎とそれに繋がっている小間の一樹庵です。
 床の間の福澤諭吉翁筆になる秋の七言詩や、松永耳庵の茶杓など慶應色を随所に出しながらも、中国越州窯の古甕を水指と見立てたり、根来の茶器や李朝の大皿など慶應色以外のテーマが随所に見えました。

 家元に取り合わせについて聞いてみました。
「今回、茶会と同時に開かれた講演は、大阪市立東洋陶磁美術館元館長の伊藤郁太郎先生による『李朝陶磁の美的特質』という演題でした。そこで私も李朝の陶磁器を中心にしつらえを考えてみました」
「このところ提唱しているように大寄せの茶会でも一献できるかを試したいという気持ちもありました。一樹庵で八寸を召し上がってもらってから、披錦斎でお茶という流れです」
「席入りの際には鐘を打って迎え付けとしました。根津青山の起伏ある庭園で待つお客様にとって鐘の音はどのように聞こえたでしょうか。これは、床の間に掲げた福澤諭吉による秋の詩の七言絶句に出てくる鐘の一節になぞらえました」
「福澤諭吉は晩年に学生や若い人達と一緒に散歩をする習慣があったそうです。床の間の漢詩の内容はその事が書かれています。その散歩の一団には、茶会で使った茶杓の作者である松永耳庵もいたようです」

 茶席での点前や水屋の手伝いは、慶応茶道会の現役学生とOB、OGの方々が中心に揃っていました。新入生にとっては茶会デビュー。 また、この機会に久しぶりに顔を出した懐かしい卒業生もいて、お客も亭主も水屋も和気藹々と茶席は進みました。
 二百数十名のお客様においでいただき、茶席は大変盛況となりました。

(川上博之)

【会 記】

    待合 一樹庵
     一献
床  李朝民画  山水

    本席   披錦斎
     和韻点て
床 福澤諭吉筆  七言詩

一點寒鐘聲遠傳 半輪残月影尚鮮
艸鞋竹策侵秋暁 歩自三光渡古川
   早起与学生諸子散歩 諭吉

  花  加茂本阿弥椿 丸葉万作
  花入 黒高麗
 炉辺
  長板飾り
   釜  名心庵好    長野 列作
   水指 蓮弁有蓋越州窯
    茶入 根来 
   茶碗 黄伊羅
    替 高麗青磁
   茶杓 松永耳庵作 独尊
            慶應茶道会蔵
   御茶 星峰   八女 星野製茶園
   御菓子 空也双紙  銀座 空也製
    器 李朝白磁 皿


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