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官休庵・全国大会での掛釜

  

川上博之

平成27年5月24日(日)

 五月二十四日、武者小路千家官休庵の官休会全国大会北東北大会が岩手県盛岡市中央公民館で行われ、岩手不白会と私の連名で釜をかけさせていただきました。
 官休庵には私が四年間お世話になりましたし、また茶会が行われた盛岡は、御存知の通り南部藩の時代から流祖不白とつながりが深く、今も江戸千家社中が多い地域です。そのような縁から、このたび席を持たせていただく事になりました。
 当日会場となりました盛岡市中央公民館は、もともとは南部家別邸とその庭園であった場所で、過去には江戸千家の全国大会でも使わせていただいきました。
 今回の席はテーマが三つありました。
 一、地元盛岡らしさ
 二、江戸千家の紹介
 三、官休庵と江戸千家の繋がり
 このような考えのもとでしつらえを考えました。
 例えば床の画賛は、幕末明治の南部利剛公、その夫人、そして利剛公の妹君という三人による合作です。双幅の大きな軸でしたので、二間ある大床でもうまく収まってくれました。他にも寄り付きの掛け軸や茶碗など、盛岡にゆかりのあるものを随所に取り入れました。
 点前座には江戸千家の道具を揃えました。家元の好みの棚や風炉釜を使い、江戸千家の点前を見て頂く事により、江戸千家の自己紹介になるのではないかと考えました。勿論、流儀の道具を使えばそれで良いという単純な考えではなく、点前座に置いた時の全体的バランスや美しさも考えました。
 官休庵と江戸千家の繋がりに関するものとしては香合が挙げられます。江戸中期の官休庵に直斎という家元がいました。不白とも同時代の人物で、『不白筆記』にも登場します。その直斎在判の香合に不白が箱書きをしています。
また、三碗目に出した黒茶碗は拙作になります。自作の茶碗を使う事にはためらいがあったのですが、この茶碗は官休庵家元不徹斎宗匠、私の父、私の三人の間に思い出があったので御笑い種に使わせていただきました。
 私がまだ京都にいた頃、不徹斎宗匠の茶碗作りに随行した際に、私にも作らせていただいた茶碗です。その後、不徹斎宗匠の茶事に父が呼ばれた際、その茶碗が薄茶で使われました。
 茶会には四百人以上がいらしてくださいました。私にとっては懐かしい方々が多く、なんだか同窓会に参加しているような気分の茶会でした。席主をしながら私自身も楽しませていただきました。
 最後に、共同名義で一緒に席を持った岩手不白会の皆様には、あらゆる面で助けて頂きました。心より御礼申し上げます。

【会記】

    薄茶席  於 盛岡市中央公民館
             新座敷
           
     寄付
床  金田一京助筆 啄木の歌
      やわらかに柳青める 云々
     中廻しに名心庵添画 柳の絵

     本席
床  南部利剛公 明子夫人 画賛
          松竹 双幅
 花入 手付大籠
 花  大山蓮華 忍冬 都
   忘れ つぼさんご
 香合 錫縁四方 直斎在判  不白箱
 脇床 米内光政筆 正々堂々
 風炉 朝鮮切合 雪輪透し  勘渓造
 釜  真形 霰       勘渓造
 風炉先  利休梅
 水指 仁清 白釉
 棚  元禄
 茶器 波蒔絵
 茶碗 不白手造 赤
  替  斗々屋写 銘 桂の泉
  替  黒 不徹斎箱 銘 孝行
 茶杓 名心庵作
  蓋置 染付 竹節
  建水  木地曲      萬象造
 御茶 池の白       星野園詰
 菓子 黄精飴       長沢屋製
    割南部煎餅      小松製
  器  木地丸

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